平成13年度 学校インターネット中間発表会全国大会 資料

環境問題について考え,解決に取り組む力を育てるための指導の工夫

−「インターネット環境家計簿」の活用を通して−

仙台市立袋原小学校 教諭 遠藤 勝弘

 

 本研究は,児童が環境問題の原因や現象,対策等について考え,問題解決のために自分でできることに取り組ませるための指導法を研究したものである。環境問題全般について調査する学習から始めて,地球温暖化に焦点をあて,自分たちの日常生活がどの程度,地球温暖化に負荷をかけているか学習させていく。その結果をふまえて,地球温暖化防止のために自分たちのできることを考えさせ,実践させていく。
 負荷の度合いを調べるには,仙台市情報教育研究推進委員会環境家計簿部会*1が作成した「インターネット環境家計簿」を活用した。本ソフトを活用する中でその効果を検証すると共に,児童の温暖化に対する意識の変容を把握した。

キーワード  環境問題 地球温暖化 二酸化炭素排出量 インターネット環境家計簿

 

 

1 はじめに

 環境問題は,国際的にも早急に取り組まなければならない社会問題となっている。特に,地球温暖化現象防止のため,二酸化炭素排出量を削減することが先進国の課題とされている。
 情報教育研究推進委員会の環境家計簿部会は,この地球温暖化防止のために個人でも取り組むことができるソフトの開発に取り組んだ。それが「インターネット環境家計簿(以下 環境家計簿)」である。
 児童が環境問題に取り組む中で,環境家計簿を活用することにより,地球温暖化防止のための意識付けと実践力を身に付けさせることができるのではないかと考えた。


*1
 後藤 暁   仙台市立東六番丁小学校
 遠藤 勝弘  仙台市立袋原小学校
 境  浩幸  仙台市立山田中学校
 遠藤 武彦  仙台市立長町中学校
 鵜沼 勝久  仙台市立八木山中学校
 高橋 典子  仙台市立高砂中学校
 北松 茂   仙台高等学校
 鵜川 義弘  宮城教育大学
 堀米 千春  宮城教育大学(研究生)

 

 

 

2 研究の内容

1 基本的な考え方

 (1)環境問題への取り組み

 近年,地球温暖化・酸性雨・オゾン層の破壊・ダイオキシン問題等による環境破壊は社会問題として,国際的に取り組まなければならない課題となっている。特に,地球温暖化の防止は,京都で行われた国際環境会議以後,世界的規模で取り組まなければいけない問題として取り上げられている。
 地球温暖化の防止については,社会全体で取り組まなければならない問題であるが,個人でも取り組む必要はあると考える。
 そこで,児童に環境問題について意識を持たせたいと考える。そのためにまず原因・現象・対策等を調査させ,その結果を踏まえさせて自分たちには何ができるのか考えさせたい。調査にあたっては,文献やインターネットなどを中心に調べさせていく。
 次に,地球温暖化に焦点を当てて,自分たちの日常生活から発生するエネルギー消費量が,地球温暖化にどの程度負荷を与えているのか理解させ,その対策を考えさせたい。また,家庭での実践に結びつけいていく。

 (2)インターネット環境家計簿の活用

「インターネット環境家計簿*2」の作成は,仙台市教育センター情報教育研修推進委員会のプロジェクトの1つとして平成12年度から行われた。
 環境家計簿は,日常生活で発生するエネルギー消費量を二酸化炭素排出量へ換算することによって,環境に対する負荷の度合いを知ることができる。その度合いを比較検討することで環境問題に対する意識を高めることができると考える。
 また,児童が入力したデータはインターネットのサーバに蓄積されるので,他のデータと比較したり,自分のデータの変化をグラフ化して見たりすることができる。
 以上のことにより,地球温暖化の防止のための個人的な取り組みを継続させる一つの方法として活用できると考える。
 また,電子掲示板も作成したので,意見の発表や交換の場としても活用できる。

*2
http://eml.edb.miyakyo-u.ac.jp/JOHO/kakeibo/kids/index.hftm

環境調査隊,活動開始!!
環境問題

 ・地球温暖化 ・大気汚染
 ・酸性雨   ・オゾン層破壊
 ・自然破壊  ・ダイオキシン問題
 ・砂ばく化  ・ゴミ問題  

   (1)調査学習(現象,原因,対策等)
   (2)発表  (質疑応答,意見交換)

地球温暖化

 ・日常生活のエネルギー消費量
 ・二酸化炭素排出量
 

   (1)データの収集
   (2)インターネット環境家計簿の活用

実 践

 ・各家庭での取り組み

図1 授業の流れ

2 授業実践

 (1)授業の計画

 授業の実践にあたっては,以下の流れで計画を立てた。(図1)
 初めに環境問題の様々な問題点を捉えさせて,調査させていく。調査する段階で自分たちの生活に起因することや自分たちにできる対策等を考えさせる。
 次に,地球温暖化問題に焦点を当てて,自分たちの生活がどの程度の二酸化炭素を排出し,環境へどのくらい負荷をかけているか知らせる。そして,個人でもできる対策を考えさせる。
 最後に,各家庭で地球温暖化防止に対して自分たちができることを実践させたい。

 (2)授業での取り組み

  (1)環境問題について調査
 現在起こっている環境問題について文献やインターネット等で原因・現象・発生源・対策等について調べさせた。
 原因については,自動車の排気ガス,産業廃棄物処理で発生するダイオキシンなど社会全般に起因することが多く出された。
 調べたことについては,発表会を行い,その場でそれぞれの調査に対しての質問を受けたり,意見交換を行った。

  (2)地球温暖化について考える
 地球温暖化を考えるにあたっては,初めに各家庭での日常生活におけるエネルギー消費量のデータを収集した。検針票や領収証の数値をカードに記入した。(図2)


図2 エネルギー消費量


図3 二酸化炭素排出量

 次に,インターネット環境家計簿を活用してそのエネルギー消費量を二酸化炭素排出量に換算した。(図3)得られた換算値から児童は,自分たちの日常生活が環境にどの程度負荷を与えていたのか知ることができた。

  (3)各家庭で実践する
 以上の学習を通して,環境問題,特に地球温暖化防止のために自分たちが家庭でできることについて考え実践させた。それぞれ家庭でどのような取り組みをしたか報告会を行った。
お互いの報告を聞いて,自分たちにできることが多々あることを知ることができた。

 【家庭でやってみたこと】
 ○水を出しすぎないようにする。
 ○お風呂には前の人から続けて入る。
 ○冷蔵庫の扉はすぐに閉める。
 ○買い物へ行くときはかごを持っていく。
 ○こまめにテレビの主電源を切る。
 ○テレビを見ないときは,すぐに消す。
 ○できるだけ家族は同じ部屋で過ごす。

3 実践の結果

 本単元の学習前と後で児童の環境問題に対する考えを把握するために以下の方法で実態調査を行った。

 (1)調査方法
 児童は環境問題をどのような視点で見ているのか調査した。調査方法は,児童の環境問題に関する漠然とした意識を数値として把握するためにイメージマップを用いた。(図4)

(1)「環境問題」ということばを聞いて思い付く問題点をいくつでも第1円(内円)に記入する。

(2)それについて考えられること(原因,状況,対 策等)を第2円(外円)に記入する。

(3)第1円,第2円に記入された単語数を量的変容として把握する。

(4)円の中心のことば環境問題から第1円に向かう地球温暖化に関するつながりと,第1円から第2円に向かう地球温暖化に関するつながりの数を質的変容として把握する。

調査日 平成13年11月 8日(事前調査)
    平成13年12月18日(事後調査)
調査対象 5年1組児童 34名 
調査方法 左図【例】参照
集計方法 左図【例】より算出  

量的把握

第1円上に記入した言語数
第2円上に記入した言語数


         合 計

質的把握

地球温暖化関連の言語数

図4 イメージマップ

量的把握

質的把握


平均  2.4
最大 12
最小  0

平均  0.4
最大  4
最小  0


平均 14.1
最大 28
最小  3

平均  2.1
最大  5
最小  0

表1 調査結果

(2)調査結果

 事前・事後の調査結果(表1)を量的把握によって比較すると,環境問題全般に関する視点数の平均は2.4から14.1へ増加した。児童は本単元の学習を通して,環境問題について様々な視点で考えることができるようになったといえる。
 第1円での単語数が増したことにより環境に関する問題点を見出すことができるようになったと考える。また,第2円の単語数が増したことからは,問題点に関する原因,状況,対策等を考えるようになったといえる。
 さらに,各家庭で電気の節約やゴミの減量等に取り組むようになったので,環境問題に関する関心が高まり,実践力も身に付いてきているといえる。
 環境問題を身近な問題としてとらえて,自分たちにも防止対策をとることができるという意識付けを図ることができた。
 また,環境問題の中でも地球温暖化についての視点は,関連言語数の平均が0.4から2.1へ増加した。
 このことにより,地球温暖化防止に関しても考えを向けるようになり,意識が高まったといえる。

 

 

 

3 研究の成果と今後の課題

1 研究の成果

 (1)環境問題について

 児童が環境問題について自分たちで一つのテーマを決めて,インターネットや文献等で調査し,まとめることにより問題意識が深まった。また,これまでは環境問題を社会の一般的な問題としてとらえていたが,調査活動を通して,身近な問題として感じるようになった。
 さらに,発表会を通して各グループの調べた内容を聞くことにより,環境問題に対する問題点を共有することができた。

 (2)インターネット環境家計簿について

 地球温暖化問題を考えるにあたって,自分たちの日常生活でのエネルギー消費量を収集させた。このことにより,普段の生活が地球温暖化と密接に結びついていることを理解させることができたと考える。
 さらに,インターネット環境家計簿を用いて,二酸化炭素排出量を算出させたことにより,日常生活が環境にどの程度負荷をかけているか知ることができた。予想以上の負荷の大きさに児童は驚いていた。
 この結果を踏まえて,少しでも環境に対する負荷を減らす方法を自分なりに考えて実践していかなければいけないと感じさせることができた。また,各家庭で二酸化炭素排出量削減の実践に結びつけることができた。
 インターネット環境家計簿を本単元で活用してみたが,小学生にとって使いやすい画面設計であったといえる。

2 今後の課題

 ○環境問題は,一朝一夕で解決できるものではない。そこで環境問題に対する意識と環境破壊防止ための実践力をどのようにして持続させていくかその方法を探る。
 ○インターネット環境家計簿の電子掲示板機能を活用して,他校と意見交換をしながら様々な考え方や視点に触れさせる機会を設定する。
 ○インターネット環境家計簿が,小学生から大人まで実用的に使えるように画面設計に改良を加える。